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読書日記189

      池田晶子『メタフィジカルパンチ』毎日新聞社 (2014)

  

池田氏いわく、哲学は根本的に役に立たない。

自明であること (例えば猫が目の前にいる) を、何故そうなっているのかと問う営みだからだと。

資本主義において人々は、お金は価値だと自明のように感じているその根本的な理由を問うのだからと。

役に立つか、立たないか。

  

ものさしは常に価値でありお金である世の中。

その根源を問うた所でサラリーマンには意味がない。

価値が価値であることに疑いをかける営みだからである。

だから哲学は危険ですよ、と池田氏は語る。

  

そして人々は池田氏を変人と呼ぶ。

変人であらざるを得ないのは、自明なことをわざわざ疑う人が少ないからに他ならない。

ところがコロナ禍において人は「こころの時代」と謳うようになってきている。

またか。

  

バブル崩壊後と全く同じことが起きている。

歴史は繰り返された。人は学習しない。技術力が向上しても精神が進歩していない証ではないか。

本気で「こころの時代」と思っているのかNHK。

また池田氏が呆れている顔が浮かぶ。

つづく

公開日2022-03-19

【2024年現在の追記・補足】

小室直樹は『危機の構造』のなかで、すぐに歴史を忘れる日本人を「健忘症」と批判していた。

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