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新・読書日記24

         橋爪大三郎『小室直樹の世界』ミネルヴァ書房 (2013)
落合陽一『忘れる読書』PHP新書 (2022)

■株式会社ミネルヴァ書房

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日記

 『忘れる読書』

朝から小難しい社会科学の本を読む気にはなれなかったので、落合陽一『忘れる読書』を読みながらウォーミングアップした。

読んでいくうちに、本の内容よりも格差の再生産というものを考えさせられてしまった。

落合氏の父親が「ニーチェを読んでいない奴とはしゃべれない」と言っていた点だけで判断するのは早計ではあるが、早いうちから岩波文庫を100冊読んでいたり、『デカルトからベイトソンへ』のような哲学と科学の橋渡するような人文書に触れていたりと、これは普通の家庭ではなかなかない環境だと感じてしまった。落合氏は読書に親しむようになった理由として、「家庭環境の影響も大きかったのではないか」と書いているが、岩波文庫一冊すらなかった自分からすれば恵まれた環境だなと思うばかりである。

 

・・・

  

落合氏はベーシック・インカムを肯定している点が印象的であった。

“今の社会を考えるには、多元的な価値観を、つまりコミュニズムと資本主義の双方を内包しながら思考していく必要があります。多様なイデオロギーを内包するには相互理解が不可欠であり、そのために教養が必要なのです。” P29

 

テクノロジー分野に詳しい人には少し先の未来が見えているのだろうか。

やはり単純作業を中心とした、あらゆる肉体労働はロボットに座を奪われ、アルバイトのかたちが今後大きく変わるだろうのか。

 

本書は特段専門用語が飛び交うことなく、朝でも難なく数十ページ読めるものであった。

  

・・・

『小室直樹の世界』

つづきを読み進めた。

(新・読書日記24に収録)

https://labo-dokusyo-fukurou.net/2024/04/27/%e6%96%b0%e3%83%bb%e8%aa%ad%e6%9b%b8%e6%97%a5%e8%a8%9823/

   

第四章を最後まで読み切った。

同じゼミ生たちのなかでも、宮台教授と副島氏は意見が対立していたりと、それぞれの道を歩んでいる様子が伝わった。

しかしながら、小室直樹の学問・行動原理を継承する意志は全員が共通して持っており、例えばそれぞれが私塾を無料でやっている点など、小室直樹への尊敬というものを感じた。

  

副島氏の本は一冊しか読んでいないが、何を批判の対象としているのかは理解できた。

ロッキード事件は、小室直樹の分析では行政権と司法権が癒着しているために起こったものだとされる。引用する。

“ロッキード(一九七六年)”における、核心点とは何か。行政権力と司法権力の野合である、と。これがあったらもうデモクラシーはほかに何があってもたちまち頓死すると、小室先生はずっとこのように書いています。” P205

 

副島氏の批判対象で官僚であった。

昨日は、マックス・ウェーバーは優秀な政治家の条件に「官僚を自由自在にコンロトールすること」を挙げていたことを理解した。

副島氏は、官僚がまるで選ばれた民であるかのように、国をコントロールしているという主旨のことを語っていた。

説得力はあった。戦後教育の汚点はアメリカ式の「やればできる」だと語っていた。

 

教育にできることは能力を上げるのではなく、適材適所を徹底すること、つまり各々の人材が各々の最も適する場所に導いていくことだと書かれていた。これは考えさせられた。

「やればできる」というメッセージは、生徒に不必要な努力を強制させたり、明らかに才能がない分野にこだわりつづける人を否定しない文化を醸成させかねない。

その根拠として、副島氏は「人間は簡単には変わらない」と考えていて、能力もそれに含まれると考えていることにあった。自身は「リバタリアニスト」と自負していて、マイケル・サンデルには全く同意できないことを強調していた。

 

それとは対照的に、宮台教授は「社会学主義(小室直樹主義)=共同体主義(コミュニタリアニズム)」の立場をとっている。

つまり、宮台教授もマイケル・サンデルのいう「共通善」にコミットすることに価値を置いている。

  

小室直樹は共感能力が高いことでゼミ生に知られている。

宮台教授は論理性と共感性の双方で極限にまで高みに達した人は。小室直樹以外に知らないと語っていた。

こう書いておくと副島氏の悪い印象を与えてしまうので、良い点を書いておくと、副島氏は「世の中に隠されていることを暴く」ということを信念に置いている。

写真付きの実名で批判までもする。「死ぬことを覚悟で書いてきた」と語っていた。

ここまで直球勝負の言論人はなかなかいない。

 

概ね、政治の腐敗は官僚制度に問題があるのではないか、という輪郭が自分のなかで浮かび上がってきた。

グレーバー『官僚制のユートピア』が読みたくなった。

つづく

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